…夢を、見ていた。
目の前にいるのは、色違いの…空色の、ミュウ。深い青の瞳に私の姿を映し、私の周りを飛び回る。
その毛並みに触れてみたくて、私は腕を伸ばした。ミュウは私の手の届く所まで降りてきて、甘えるように私の手に頭をこすりつける。
『すごい…生きてるんだ』
それがミュウのテレパシーだと、私は何の疑問もなく受け入れた。
『いいな……温かい』
私は意外とひんやりとしたミュウの艶やかな手触りを楽しんでいたので、その言葉に込められた本当の意味に気付かないところだった。
ミュウが、生きている者の温かさに静かな感動を覚えていたのだとは。
私達はそれきり暫く黙って、互いのもたらす心地良さに浸っていた。
やがてミュウが、名残惜しそうに私から身体を離した。
『もう、行かなくちゃ。これは、最期に会えたお礼』
ミュウは身体に青いオーラを纏わせ、そのオーラを集めてビー玉のような青い球を作った。私が受け取ると、それは再びオーラにばらけて私の身体の中に消えていった。
『恐れないで』
ミュウの姿は急速に薄れてゆく。
『生きている限り…可能性は……』
目を開けたら一面薄青の世界だった。私はどこかに浮いていて、薄青のヴェールの向こうには何かの機械が見える。
何の機械だろう、と思って近付こうとすると、ガラス壁にぶつかった。 ガラス壁に映った自分を見て、私は完全に目が覚めた。
「ミュ…ッ」
漏れ出た声は甲高く、私を見つめ返す目は青い。ピクピクッと、尻尾が左右に揺れる。
そうだった。今や私が…私自身が、空色のミュウになってしまったのだった。それはどうやら夢ではないらしい。
段々と思い出してくる。このガラス管に閉じ込められて、少しでもこの身体の事を把握しようとあちこち動かしてみたのにどうにも上手く動かせなくて、四苦八苦しているうちに疲れて眠ってしまったようだ。
──だって指が三本しかないし、尻尾があるし。
何というか、考えれば考えるほど、ドツボにはまっていくような感じ。
この尻尾がなぁ…、と考えながらそれを緩やかにくねらせ、私はん? と首を傾げた。
私、今、この尻尾を動かせた?
もう一度、先程の感覚を思い出しながら、同じ動きを再現してみる。眠る前、全く思ったようには動かせなかったのが嘘のように、それはしなやかに動いた。
…うわぉ。私、この身体に慣れてきちゃったんだろうか。
嬉しいような、悲しいような、何とも複雑な気分である。
それとも…。ふと私は、さっきの夢の事を思い出していた。
ミュウ。貴方の仕業なの?
「何だ、この能力値は…? 最初のデータと違うではないか」
「ミュウが眠ってから、急激に伸びだして…」
「元からポケモンとしては最高レベルだったのに、まだ伸びるとは…。嬉しい誤算だな。やはり、人間と合体させた影響か?」
「いかがなさいますか?」
「ん? 勿論、計画は続行だ。人間の精神を持つなら、技も五つ以上覚えられる筈…。楽しみだな」
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