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露呈。2

 ふわふわとした、心地良い浮遊感。もし雲に乗れるのだとしたら、雲はこんな感触なのだろうか。
 ふと意識を取り戻して見回すと、そこは柔らかな乳白色の光一色の世界だった。この色。微妙な無重力感。調整されていないボールの中だ。
 一応はトレーナー持ちのポケモン(?)の自分が、自分のではないボールに入れられている!?
 ここはオーレ地方ではない筈なのに、まさかこんな所にもスナッチマシンがあったりしたのだろうか。そして自分はスナッチされてしまったのだろうか。
 いや、それ以前に。自分がポケモンだと、バレた!?
 直前までの記憶が蘇ってくる。そうだ、確かポケモンセンターまでは何とか辿り着いて、ジョーイさんに皆を預けて…。そこで、倒れたんだった。
 …多分、その時に『変身』も維持できなくなったのだろう。そしてどうやったのか、このボールに入れられたというわけだ。
 ボールに完全に入ってしまっている今、じたばたしても出られないだろう。皆はどうしているだろうか。回復はしてもらっていると思うけど、マスターがポケモン化した挙げ句の果てに他人にゲットされて、野生に帰ったりしたのかな?
「気が付いたみたいですわ」
 物思いに耽っていたら、外からジョーイさんの声が聞こえてきた。
「じゃあ、事情を聞きましょうか」
 ジュンサーさんの声もする。ボールが持ち上げられ、運ばれて…
 いきなり出されたものだから、上手く姿勢を制御できなくて、浮く事を忘れたまま床に衝突してしまった。



 色違いのミュウは、ボールから出された勢いのまま、ベシャッと床に叩きつけられた。普通のミュウは浮いているものだが、このミュウはなかなか浮き上がろうとしない。体の作りを考えると立つのは難しい筈なのに、どうにか立ち上がろうとして、また転んだ。それからやっと、思い出したように、床からほんの少し、身体を浮き上がらせた。
 知性を秘めた青い瞳が、部屋にいるジュンサーとジョーイを捉えて訝し気になる。他に誰もいないのか、とその目は語っているようだった。
「ミュウミュ?」
「バトルをしてもらいたいわけじゃないわ。私達は、貴方の話を聞きたいの。ミュウなら、テレパシーが使えるでしょう?」
 ミュウは困ったように黙り込んだ。テレパシーってどうやるの?とでも言いたげな様子だ。
『テレパシーは…得意じゃない』
 暫くして、小さな思念の『声』を出す。
『ミュウならテレパシーが使えるのかもしれない。でも自分は元々、ミュウじゃなかった』
「ミュウじゃなかった…?」
 ミュウは頷いた。
『…人間、だった。異世界の』
「それって…」
 ジュンサーは、ミュウとミュウの連れてきたポケモン達の『親』ということになっている人物のトレーナーカードを見た。
「この『アオイ』という子…確か山奥に隠されてた研究所で保護した、出身地不明の子だって連絡が来てたけど…もしかして……」
「それなら、貴方がここに来た時に着てた服、持ってきた方がいいかしら」
 ジョーイの提案に、ミュウは嬉しそうに尻尾を揺らした。

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