着いた。…やっと、辿り着けた!
ポケモンセンターの赤い屋根が、これほど頼もしく思った事はない。
正直、皆も限界だったけど自分も限界で、もうテレポートしようとしてもこれっぽちも精神集中ができなかった。ゲームでいうPP切れってやつかな。
それでいうならきっとこのパーティーは瀕死6匹とピコンピコンとアラームの鳴っている倒れそうな7匹目で成り立ってるってことになるんだろう。ゲームなら全員が瀕死になれば自動的に(所持金が半分になった上で)ポケモンセンターにワープするけど、この世界でそんな事を試す勇気はない。
第一、自分がポケモンになったり7匹目の手持ちになったりしてる時点でゲームからは逸脱しまくっている。
ふらふらとそんなとりとめのない事を考えながらジョーイさんに6つのボールを預けたところで、自分の体力も尽きた。
ジョーイさんの驚いたような声が聞こえたと思った時には、目の前に床が迫っていた。
満身創痍の、パッと見では少年とも少女ともつかない子供が覚束ない足取りでセンターに入ってきた。
一体何があったのだろう。何をしたら、そこまでボロボロになれるのだろう?
ジョーイは彼(彼女?)から、瀕死状態のポケモン6匹を受け取る。
何て酷い。連戦に次ぐ連戦でなければ、ここまでポケモンが傷付くなんて事はない。
思わず眉を顰めるジョーイの目の前で、ポケモンを渡せて安心し、気が緩んだのか、子供は…いや、子供だったものは、力尽きたように倒れた。
「貴方…?」
トサッと、人間が倒れたにしては軽い音がする。服と荷物に埋もれるようにして横たわっているのは、人間ではなかった。
──幻のポケモン、ミュウ。しかも、空色の毛並みを持つ、色違い。
道理で性別がよく分からなかったわけだ。ミュウには性別はないのだから。
だがジョーイには幻のポケモンを見た感慨に耽っている暇はなかった。
そのミュウは、渡された6匹の瀕死のポケモンよりも、更に重傷にしか見えなかったのである。
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