人の気配。話し声。
意識がゆっくりと浮上する。
どこだ? ここは。温かくて柔らかくて…まるでベッドの中のように……。
薄く目を開けると、少年が二人、いる。
「――!!」
一気に目が覚めた。そうだ、オレは昨日、使い魔として契約を……。
ここはベッドの中の「ような」場所じゃない。本当に、ベッドの中なんだ。
「おはよう、アデル。ちょっとは落ち着いたか?」
少年の片方、オレの契約主ヴァンが、オレの顔を覗き込む。
「…ヴァン」
「できればこの休みの間に、あんたの復学手続きと買い物を済ませたいからな。起きれそうなら、着替えてくれるか」
買い物、は分かるが…
「復学手続き…?」
「通いたいだろ? ティアセル先生に頼めば、何とかしてくれるかもしれない」
ティアセル先生…ああ、ラルフの事か。未だにしっくりこない。あのラルフが先生になった事が。
オレの沈黙を誤解したのか、ヴァンは言葉を継いだ。
「先生が拒否ったら、脅してでもな。約束したじゃねーか。人間らしい生活、やり直すって」
「でも先生ならノリノリで協力してくれそうだけどなっ!」
もう一人の少年…名前、何だっけ…が、ケラケラと笑う。彼は軽いノリのまま、オレに向き直った。
「そういやオレら、自己紹介してないよな。オレはリック・レークイン。ヴァンのクラスメイトだぜ」
「アデル・リテラティ。お前の言い方を借りるなら、ラルフ・ティアセルの元クラスメイトで、ヴァンの使い魔だ」
リックの差し出した右手を、オレも右手で握り返す。
リックはそこで、ニヤリと笑った。