私は円柱状のガラス容器の中に入れられた。上下には大仰な機械が接続され、容器は密閉される。
程なくして天井の機械から薄青色の液体が降り注いできて、相変わらずぴくりとも動かない私の毛皮を濡らす。それは改めて私に全身の感覚を再認識させた。人間よりも、遥かに鋭敏な感覚を持つ身体。落ちてくる液体で空気が揺れる、その揺れすら感じ取る感性。
私はこれっぽっちも動けないのに液体は降り止まず、だんだん床に水たまりを作り、水たまり同士がつながり、ついには容器に溜まっていく。上がってくる水位に、私は焦った。
このままでは溺れてしまう!
だがどうやらそれは杞憂に終わりそうだった。液体が特殊なのか、ミュウの能力なのか、私は液体の中で呼吸している自分に気付いた。薄青の液体は今や容器全体を満たし、比重の関係なのか、私は容器の中央付近に浮いている。
ようやっと周りを観察する余裕が出てきて、私は容器の壁に顔を近付けた。部屋の中には大きな機械やパソコンが何台も置かれていて、その合間を白衣の人間達がせわしなく動き回っている。指示を出しているのは、あのドクターと呼ばれている男だ。
こつん、と頭がガラス壁にぶつかり、私は慌てて姿勢を正した。いつの間にか身体が動くようになっている。そう、考えてみればさっきも、頭を動かすことができたんだっけ。
私はふぅ、と溜め息を吐いた。もうなるようになれ、だ。幸いにもこの液体の中にいる間は、あのズキズキするような頭の痛さはない。その分ミュウの感覚や能力は封じられているのかもしれないが、今の私にはちょうどいい。
私は身体のあちこちを、確認するように動かし始めた。
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