紀元前7~6世紀にペルシャで成立。
善神オルマズト(アフラ・マズダ)と悪神アーリマンを頂点とする二元論世界観を有する。天使たち(アメシャ・スペンタ、「聖なる不死者」と呼ばれるオルマズトの分身)は、オルマズトの使徒にして、人間とオルマズトの媒介者という位置にある。悪魔はダエーワと呼ばれている。
なお、六大天使とそれに対応する六大悪魔が有名らしい。
◎ウォフ・マナフ
六大天使(アフラ・マズダの神格の六つの面)の筆頭であり、「善き考え」「善き心」を象徴している。
彼と対になる悪魔はアカ・マナフである。人間の心に潜むあさましい思いや憤怒をあおり、神を疑う心を芽生えさせるような邪念を生むことに力を費やす。
◎スプンタ・マンユ
アフラ・マズダと天国の娘であるとされる。大地を治める農耕や牧畜の守護者で、地球そのものと同一視される。いわばギリシャ神話の神々の母ガイアみたいな存在。同時に宗教的調和と信仰、「恵み深き心」「善きものへの献身」を象徴している。
前身は、古代インド神話にも登場する地母神アールマティー。アールマティーの名は、「順応する意図」を意味する。
彼女と対になる悪魔はアンラ・マンユである。
◎アシャ・ヴァヒシュタ
アシャ・ヴァヒシュタ(アルトヴァヒシ)は、「正義あるいは真実」を象徴する。彼は神の節理の体現者で、自然界の元素の中では火を司っている。その役割は、善なる者を厚遇し、その反対に悪なる者を厳しく罰するという戦闘的なイメージの強いものである。
彼と対になる悪魔は、ドゥルジである。「虚偽」を司り、世界の秩序を破壊する事を目指して疫病を流行らせたり、害虫を大量に発生させるなどして、人間を混乱の渦に巻き込む。また、美しい女神アールマティーの姿に化けて、預言者であるゾロアスターを誘惑したことでも知られる。(ゾロアスターは最初から彼女が悪魔である事に気付いていたので、この企みは失敗に終わった。)
◎クシャスラ
クシャスラ(シャリヴァー)は、「選ばれた王国」「支配」「権威」を象徴する。いわば、弱者の救済なども含め、アフラ・マズダの精神を地上の権力で実行する善政の体現者だ。彼は、自然界の元素では金属と同時に神のシンボルを司っている。これは、貴金属が王権、ひいては神の権威と結びつけて考えられていたからのようだ。
彼と対になる悪魔は、「無秩序をもたらす悪魔」サルワとされる。
◎ハルワタート
ハルワタート(フーダット)は、「健康」「完全さ」「救済」を象徴する。自然界の諸要素の中では水を司り、大地を司るスプンタ・マンユ、植物を司るアムルタートと共に、女性であると考えられている。
彼女と対になる悪魔は、タウティである。「熱」を司るが、その熱とは砂漠の灼熱や熱病の源などの悪性のものを表わす。
◎アムルタート
アムルタート(アマダット)は、ゾロアスター教の六大天使の中で、ハルワタートと一対のようにして語られる。「生命」あるいは「不死」を象徴し、自然界の中では植物を司る。古代ペルシア人の伝承にある聖なる生命の樹ハマオと深く結び付けられて信仰されていた。
彼女と対になる悪魔は、ザリチェである。「渇き」を司るが、それはタウティによってもたらされた「熱」の帰結としての干ばつや日照りの事である。