「え? 登録…ですか?」
ギルドとやらの受付に、無理矢理引っ張ってこられて、登録を、などと言われてしまった。
ただ、人のあまり来なさそうな森の奥で、年老いた竜の最期を看取っていただけなのだが。
差し出された用紙を見る。
「『呼び名』…?」
「はい、本名を隠し、匿名で行動されたい方の為のサービスです! 本名を知られるのが嫌だからと言って登録されない方が、我々としても損失が大きいですので」
「へぇ……」
そういえば、ここの世界の一般的な人名の形式を、まだ知らない。
アシュレイ、アデル、アドリゲル、アズール、葵……。
ざっと一通り考え、筆記具を手に取った。
「『通りすがりA』…ですか? あの、ずっとそう呼ばれる事になるんですよ? もっと格好良い名前とか、二つ名は書かれなくても良いのですか?」
「いえ、これで十分。実際に、単なる通りすがりなんですから。注目されても、鬱陶しいだけですので」
二つ名など書いたら、今は別行動をしている旅の連れに、何と言ってからかわれる事か。
というか、まずギルドに登録した事について質問攻めに合いそうだな、と、こっそり溜息を吐いた。
PR