意識を取り戻したら、何だかさっきまでいた筈の森の中の戦場には場違いな……しかも、えらく時代錯誤な、まるで中世の貴族の屋敷の一室に寝かされていた。
「……ああ、目が覚めたか」
豪華な椅子に腰かけていた、“アシュレイ”が言う。
「無理に起き上がろうとするなよ。何とか拾ってこれたが、何か欠けさせたかもしれん」
「欠け…!?」
思い出すのは、氷に閉じ込められていく時の、ひんやりと冷たい凍えるような死の息吹。
「ああ、まず説明が要るか。ここは…私の為に作られた、アレの心の一部だ。お前は…アレに、魂を『喰われ』かけている状態だったのを、私がここに拾ってきた」
「じゃあ、僕の身体は…」
「アレの作り出した結晶に囚われ、深い眠りについている。全く、化け物相手にわざわざ飛び出していくとは…馬鹿か? お前は」
“アシュレイ”は鼻を鳴らした。
「まあ、良い。お前がフェレ侯同様お人好しなのは、仕方ないのだろう。今は、ここの外の嵐が収まるのを待っている状態だ。出て行けば、今度こそ喰われるぞ」
窓の外には、一面の荒野。何もない。
――否。
荒れた大地を埋め尽くす、無数の…墓標。
「言っただろう。あそこは今、とてつもなく荒んでいると」
“アシュレイ”は、嘆息した。
「暴走した後は、いつもああだ。おさまるまで、待つしかあるまいよ」
ふと向けた視線は、酷く冷めている。
「それとも、お前もあの仲間入りをするつもりだったのか?」
「フェレ侯エリウッド、此処に眠る……」
自分と全く同じ顔の青年が死んでいるのを見るのは、とても奇妙な気分だった。
荒野の中央にそびえる大樹の根元近くになるほど、墓標は立派になっていく。
ひときわ立派な墓標が、“エリウッド”には用意されていた。
「最後の被害者ラズルーン、此処に眠る…?」
透明な大樹に取り込まれた、無残な死体に刻まれた墓標。
「……ああ、それは」
説明しかけた“アシュレイ”が、目を見開く。
彼が何か言うよりも早く……
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