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間章・契約後1。

 ヴァンがグラウンドに描かれた陣に帰ってくると、ティアセル教師はほっとした顔を見せ、次いで訝し気な表情になり、最後に顔をしかめた。
「先生、契約終わりました」
「……それにしては、肝心の使い魔の姿が見えないぞ」
「みっともない姿を人目に晒すのは拷問だと言われたので、本人は後で見せます。取り敢えず、印を確認してもらえますか?」
 言うなりヴァンは、さっさと上着を脱ぎ、シャツを捲り上げて背を出した。
 ティアセルは、息を呑む。
「これは…っ! こんな複雑な印、俺は見た事がない。ヴァン、お前、何を喚んだ…?」
 ヴァンは暫し考え、答えた。
「さぁ…? 本人も、自分の種族は知らない様子でしたが」
 そんな事あるものかと、周りがざわめく。そのタイミングを狙って、ギリギリ先生に聞こえるか聞こえないかの声量で、囁いた。
「名前は、アデルと言ってました」
「!!!」
 ティアセルは、酷く動揺した、ようだった。一瞬で、表向きには冷静さを取り繕った事に、ヴァンは密かに感心する。
「そうか、それはますます会うのが楽しみだな」
 感情の読めない声音で返された台詞には、しかし心からのものであろう響きが含まれていた。
「喚べたなら、帰って良いんでしたよね?」
「ああ、喚べたなら今日は終わりだ。早く帰って風呂に入れ」
 やっぱり顔をしかめたのは臭かったからかと、ヴァンは苦笑した。
「先生に言われずとも、そのつもりです」

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契約。

 契約を、と呟いたオレを中心に、光の線が走って魔法陣を刻みゆく。
 光は少しずつその明るさを増し、オレは初めて目の前のこいつが亜麻色の髪に深い紫の瞳をしていると知った。
 ……にしても、オレは魔物側の契約の進め方なんて知らないが、良いのだろうか。
 その考えを見透かしたようなタイミングで、どこからか声が聞こえた。
 ――ヴァン・スキャバードとの契約、見届けた。
 一際明るく光が輝き、背中に衝撃が走る。
 役目を果たしたと言わんばかりに薄れていく光の中で、ヴァン(多分)も少し痛そうな顔をしていた。
「……ヴァン・スキャバード?」
 取り敢えず、忘れる前に確認しておく。
「何だ? 改まって」
「…いや、確認の為に」
 一応、ヴァンで合っているらしい。彼はオレの言葉を誤解して、言った。
「確認? 契約印のか。背中に出たみたいだな。この暗さだと見難いと思うが…明るくしても平気か?」
 契約印は使い魔とその主両方に共通して刻まれる印、契約の証だ。概ね、身体の似たような部位に出てくるというが…さっき背中に走った衝撃が、そうだったみたいだ。
 ヴァンは返事を待たず、指先に灯していた光を少し高い所に浮かべ、光量を増加させた。
 眩しい。物凄く眩しい…が、最初の頃ほどではないかもしれない。まだ何とか耐えられる。
「名前が確認したかっただけだ。印の確認は別にいい」
「あ、俺、言ってなかったのか」
「契約して初めて知った」
 しかし、目が慣れてきて辺りを見ると、改めて此処の酷さが分かるな。ただの殺風景な石造りの牢獄…汚い事この上ない。
「じゃあ俺も念の為に確認するが、あんたはアデル・リテラティで間違いないんだな?」
「合ってるよ」
 返事をしながら、オレは自分の身体の状態をチェックしようと見下ろす。
 長く伸びた髪は、ずっと暗い中にいたからか、心労とかショックとかの影響か、すっかり白く色褪せていた。服はドロドロのボロボロ。そしてあちこち、手足と首の枷から伸びた鎖で縛られている。
「よく見たら、本当にヒドい格好だな。取り敢えずこれ、壊すぞ」
 ヴァンは、手の中に光の刃を出現させた。オレを気遣っての事だろう、慎重な手付きで枷を解体していく。
 邪魔にならないよう身体を支えていようとしたのだけれど、手足には全く力が入らず、オレの身体は解放された瞬間その場に崩れ落ちていた。…その筈だった。
 予想していたよりも軽い衝撃。
「おっ…と」
 ヴァンがとっさに身体を支えてくれていた。ゆっくりと、壁にもたれかからせるように座らせてくれる。
「やっぱり、さっきの魔法、不完全だったんだなー。慌ててかけたから」
 持っていた刃を光の粒子に還元し、彼は集中するように目を閉じた。
「……『癒やしを』」
 やっぱりヴァンは凄い。身体が軽くなった気がする。それに…手足の先が、ほんのりと温かい。オレの身体、冷え切ってたんだな。
「ちょっとはマシな顔色になったな。立てそうか?」
「んー…。ごめん、今はまだ無理っぽい。いくら治癒の魔法でも、体力完全に戻すのは難しいからな」
「そっか…」
 ヴァンは言い、屈み込んだ。
 ん…? 屈み込んだ?
「よっと」
「ぅわぁっ!!? な、何すんだよ!?」
 普通、何も言わずに抱え上げるか!? というか、男を…そ…その……ひ、姫様抱っこなんてしねーだろっ!!
「だってあんた、立てねーんだろ?」
「だからっていきなり、こ…こんな…っ!!」
「…の割には、大人しいけどな」
 オレが暴れてないのは、一重にそれだけの体力が無いからだ! 暴れれるもんなら、絶対暴れてるってーの!
「先生とかやきもきしてるだろうし、とっととこんな場所おさらばしようぜ」
「…!! お、降ろせっ! 今すぐ降ろしてくれ!!」
「わっ、とと。どうした? 急に」
 無理矢理身体を捻ったオレを、ヴァンは慌てて抱え直す。
「こんなみっともない格好で人目に晒されるとか…拷問だ!」
 情けなくて死ねる…!
「…そんなに嫌か?」
「嫌だっ!!」
 ヴァンはやれやれと溜め息を吐き、オレを降ろしてくれた。
「分かった。じゃあ俺は先生に報告しに行ってくるから、あんたは寮の大浴場行ってろ。後で服を届けてやる。それで良いか?」
 正直、とても嬉しい譲歩だった…オレがせめて、人並みだったなら。落ちこぼれと言われるような存在でなかったら。
「………無理だ…。オレ、転移使えないから…」
 肩を落として呟くと、ヴァンは眉を顰めた。
「転移が使えない?」
 オレは、声を絞り出すようにして、答える。
「魔力が…足りないから。……使えない…」
 転移という一般的な魔法すら使えないから、オレは落ちこぼれと言われてきたんだ。
「あんた…」
 ヴァンは何かを言いかけて、やめた。
「んじゃ、先生に報告した後、迎えに来る。んで、浴場に行こう。それなら大丈夫だろ?」
「………」
 ここまで気を遣わせてしまった事が申し訳なくて、オレは黙ってただ頷いた。
 ヴァンは苦笑し、オレの頭をくしゃりと撫でる。
 不思議と、それは不快ではなかった。
「すぐ戻ってくるから待ってろ」
「……ああ」
 光源となった光の球を空中に残したまま、ヴァンは転移していった。
 空間に静寂が戻ってくる。オレは大きく息を吐いた。
 あまりに…あんまりにも目まぐるしく色々な事が起こりすぎて、夢ではないかとさえ思えてくる。けれど、オレは枷から解き放たれ、頭上には光が浮かんでいて。
「ヴァン・スキャバード…か」
 何となく零れた独り言だけが、光に吸い込まれていった。

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続5・召喚の儀。

「認めてないんじゃない…っ!! お前がオレに釣り合わないんじゃない、オレがお前に見合わないんだよ!」
 思わず顔を上げ、否定してから、しくじったと気付いた。おそらく苦虫を噛み潰したような表情をしているオレに、そいつはいたって真面目に、言った。
「そんなのは俺が決める事だ。あんた、自分の事、過小評価しすぎ」
 過小評価…?
「自分の事が信じられないなら、俺を信じろ。俺は、あんただから契約して欲しいんだ。あんた、すっげー良い奴みたいだし、面白いから。絶対、こんな所に閉じこもってて良い奴じゃない」
 ひくりと、喉が鳴った。
「……本当に…?」
「ん?」
「本当に、オレ、やり直せるかな…?」
「ったり前だ。そもそもあんた、単なる被害者じゃないか」
 どうしてお前は、そうポンポンとオレの欲しかった言葉を言ってくれるんだ…?
「来る気になったか? 契約の条件は?」
 ……契約の、条件。大抵の使い魔が、召喚者が己の主に足りるか、力量を知る為に出すという、条件だけど。
 こいつはオレが釣り合わない程に出来た奴だ。だから、力量を測るような条件は、今更出したくない。出すまでもない。
 ただ一つ、我儘を言っても良いなら……
「…オレ、まだ自分が魔物だって、納得しきれてない。だから…、できれば、人間らしい生活をさせて欲しい」
「あんたな…。何を言ってる。そんなの当然だろ?」
 心底呆れた風に認められた。そりゃあ、条件としては、異例この上ないだろうから。
 でも、オレにとってはとても大切な事。やり直しても良いなら…やり直させてくれるなら。
「それなら良いんだ…。契約を」
 オレを此処から…解放してくれ。

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続4・召喚の儀。

 多分、オレのこの反応は予想できていたのだろう。彼は驚く様子は見せず、理由を訊ねてくる。
「だってお前、見るからに出来が良さそうだから。オレなんかよりもっと良いのと契約できる筈だ」
 とっさに治癒の魔法を使えるほどのずば抜けた集中力、その気になって探れば分かる魔力の多さと質の良さ。
 散々落ちこぼれと罵られ、後天的に魔物に…なりそこねたかもしれないオレが、釣り合う訳ない。
 それに、契約してしまったら、オレは完全に魔物になった自分を自覚しなきゃいけない。あいつらが嗤い、こいつにまでちょっかいを掛ける姿が目に浮かぶようだ。
 だから、オレは契約したくない。なのに、こいつは、笑いながら言うのだ。
「俺があんたを気に入ったんだよ。他の奴等に文句なんか言わせない。俺と来い。もう一度、やり直せば良いだろう…あんたの人生を」
 ――!!
「……そ…んな事……。出来る訳、ない…」
 否定する声に力が入ってない事が、自分でも分かった。
「あんた、俺を誰だと思っている」
「…知るかよ…っ。でも…オレは……」
 言葉が出なくて、オレは俯いた。
「悪かった。そんな顔をさせるつもりはなかったんだ」
 優しい声が降ってくる。オレ、そんなにみっともない顔をしてるんだろうか。
「なぁ…。俺はどうしたら、あんたに認めてもらえるんだ?」

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続3・召喚の儀。

 せっかく軽く言ってやったのに、そいつはますます不快気に顔を歪めた。
「あんたは…」
 文句を言いたいらしいが、言葉にならないみたいだ。頭を軽く振り、溜め息を吐いて、彼は話題を変えた。
「あんた…自分の種族、分かってるか」
「? ……取り敢えず、使い魔契約に引っかかったんだから、人間ではない訳だよな…。吸血鬼に噛まれたんだし…下位吸血鬼……に、なるのか?」
 というか、何故オレの種族を聞いてくる? まさか、こいつ本気でオレを使い魔にしようとか考えてないよな?
 訝しく思ってそいつを見ると、そいつはオレよりももっと難しい顔をしていた。
「……やっぱ、あんた、面白い」
「は?」
「あんた、吸血鬼じゃありえねーよ。俺、さっきあんたが暴れた時、とっさに光属性の治癒の魔法使ったんだ。吸血鬼なら、その時点で…」
 治るどころか、深手を負ってた事になるな。しかし、よくとっさにそんな魔法が使えたものだ。治癒の魔法は、凄く集中力を要する筈なのに…。
 ニヤリと笑い、そいつはオレに言った。
「ますます連れ出したくなったな。あんた、契約の条件は何だ?」
 ある意味予想できた言葉。そいつはこの為に此処に来たと言ってたんだから。
 オレは、静かに息を吸った。
「悪いが、オレは契約するつもりはない。他を当たってくれ」

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続々・召喚の儀。

 ちょっと待て。ちょーっと待ってくれ。お前、今、何と仰いました?
 使い魔契約…だって? そんなものの最中に、何故こんな所に飛ばされる?
「使い…魔?」
 無意識に声に出していたらしい。相手は頷いた。
「此処は、あんたの作った異空間だろ? ほら、上級使い魔の契約に付き物の…」
 オレの微妙な顔に気付いたのか、言葉が尻すぼみに消えていく。
「……違うのか?」
 寧ろ、此処の何処をどう見たらそんな風に見えるのか、是が非でも教えて頂きたい。
 ……いや、此処は無駄に暗いから、気付いてないのかもな。
「単なる学園の地下。…陣を描き間違えたか?」
「生徒が陣を描くのは禁止されてる。それに、ちゃんと手応えは感じたぞ」
 嘆息しながら答えたら、むっとした声で言い返された。手応えまで感じてるなら、どうして此処に……
「喚び寄せようとしたら、逆に引っ張られた。あんたが喚んだんじゃないのか」
 ……オレ、が?
 喚んでない、と言おうとして、脳裏をよぎる先程の記憶。
 ――無理だ、オレはそこに行けない。
 オレはどうしてそんな事を考えたんだろう? いきなり枷が魔法を感知して、オレはオレで暴走しかけて…暴走? 本当に?
「おい?」
 こいつは使い魔を喚び寄せようとした。それが喚べなくて、逆に喚ばれたと言った。
「………ははっ」
 思わず乾いた笑いが口から零れる。笑わないと、泣きそうだ。
 何てこった。暴走するまでもなく、オレはもう、完全に魔物になってたんじゃないか。
「俺、何か変な事言ったか?」
 それには首を振って否定してやる。悪いのはこいつじゃない、まだ自分が人間だと信じてたオレの愚かさだ。
 ジャラリ、と首枷から伸びる鎖が鳴り、それが余計に惨めな気分を掻き立てた。
「……すまん、本当に訳ありなんだな」
「どうしてお前が謝るんだ?」
「いや、あんたがどうして制服姿で鎖に繋がれてるのか、疑問だったんだ。あんた、もしかしてアデル・リテラティじゃないか? 使い魔召喚で禁忌の陣を描いたという」
 それには、二重の意味で驚いた。一体、この短時間でどれだけショックを受けただろう。
「オレ、禁忌の陣なんて…そもそも召喚の陣だって描いてない!」
「何だって…?」
 それはこっちが叫びたい! そもそもオレがこんな所にいるのは…っ!
「あいつら…っ! オレを身代わりにしといて…その罪までオレに押し付けやがったのか!!」
 激情に、枷が反応した。オレが暴れないようにと、オレを縛る枷。
「ぐ…っ、ああぁっ!」
 久しぶりに、自分から作動させてしまったな。頭がガンガンして、凄く息苦しい。
「大丈夫か!? ……」
 声がどこか遠くに聞こえる。何を言っているのか、よく聞こえない。
 と、ふと身体がかなり楽になった。いつの間にかきつく瞑っていた目をそっと開けると、心配そうに覗き込んでくる顔。
 無言で見返すと、相手はゆるゆると息を吐いた。
「…落ち着いたか?」
「ああ、何とか」
「その話、詳しく聞かせてもらって良いか?」
 正直、長話をするには、心身共に疲れ果てていた。だから、端的に言った。
「…クラスメートが、陣をいじって多人数で召喚を行い、狂った吸血鬼を喚び出した。そいつら、オレを吸血鬼の方に突き飛ばして、逃げたんだ。オレは吸血鬼に噛まれて、気を失った。それ以来、此処にいる」
「酷い話だな」
 その声と、しかめられた表情に、嘘偽りは感じられなかったから。オレは努めて明るく、相槌を打った。
「だろ?」

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続・召喚の儀。魔物side

「……っ!」
 眩しい。とてもじゃないが、目を開けれたもんじゃない。
 相手は一瞬足を止め、しかし何事もなかったかのように歩みを再開して。
「来ないでくれっ」
 止めようと発した声は情けないまでに掠れていて、多分向こうには届かなかった。
 …いや、一応届いていたらしい。
「悪いな、聞こえない」
 オレと同い年くらいの男の声がして、声の主はもうオレのすぐ近くまで来ていた。
 彼の持つ光のあまりの眩しさに顔を背けようとしたけれど、彼の手に邪魔される。
「眩しい…っ!」
 オレ、何で吸血鬼が召喚されたらわざわざ辺りを真っ暗にするのか、よく分かった気がする。駄目だ、耐えれたもんじゃない。
「眩しい? …これで?」
 不思議そうに、少年は呟いた。
 …悪かったな、眩しくて! どうせお前も嗤うんだろ…う?
「……?」
 気のせいか? 眩しいのが、少しマシになったような気が……
「これで良いか?」
「!?」
 びっくりした。こいつ、わざわざ光を落としたのか!?
 何とか少し目を開け、目の前の影に尋ねてしまう。
「お前は…オレを嗤いに来たんじゃないのか」
「は?」
 「は?」って何だ?
 ようやっと見えるようになってきたオレの目に映ったのは、呆気に取られたような少年の顔。
 いやいや、オレにとってはお前のその顔の意味の方が分からねーよ。
 たっぷり一呼吸分は置いて、少年は我に返った。
「ちょ…ちょっと待て。誰があんたを笑いに来るんだ」
 こいつ…オレの事を知らない? まさかとは思うが、転移に失敗して迷い込んだのか?
 普通に接してくれるのはありがたいが、あいつらに知られるわけにはいかないな。
「知らないなら、深入りする前に返れ」
 こっちは善意で言ってやったのに、そいつは憮然とした表情をした。
「帰れるか。俺は使い魔の契約の最中に、此処に飛ばされたんだ」
 多分、その瞬間オレは、すっげぇ間抜けな顔をしてたと思う。
「………は?」
 そして多分向こうは、「は?」って何だ? とか思ってた可能性が高かった。

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