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契約後5。

 浴場から出ると、先生っぽい男の人と男子生徒っぽい人がいた。
「見張りサンキュー、リック。先生、わざわざすみません」
 ヴァンの言葉が、オレの予想が間違ってなかった事を教えてくれる。
 …しかし、屋外って、眩しいな…。眩しくて、まだ二人の顔まで把握できない。
「いや、気にするな」
 先生、と呼ばれた人が口を開いた。彼の声には、何か懐かしい響きがある。
 この声は…まさか……?
「……ラルフ…?」
「アデル…。生きてて良かった。…何か色々変わったみたいだけど」
 やっと見えるようになった友達の顔は、すっかり大人になっていた。
 オレは愕然とする。どうしてラルフは、こんなに老けた…?
「え、先生の知り合いっすか? ってか、アデルって…」
 リックとか呼ばれてた生徒が、ラルフに聞いている。
「こいつは……アデルは、今だから堂々と言えるが、俺の大切な友達だ。召喚陣の描き順は、こいつに聞いたんだぜ。あの陣は…アデルの描きかけの陣をお偉いさんがパクったものだからな」
「描きかけの…って、じゃあ、あれは、禁忌の陣なんっすか!?」
「それは濡れ衣だ! こいつは…自分を虐めてたクラスメート庇って、そいつらが多人数で召喚した吸血鬼に噛まれただけで、禁忌の召喚をした訳じゃない。寧ろ身代わりにされた挙げ句の果てに、罪まで押し付けられた、一番の被害者だ!」
 ラルフの剣幕に、可哀想な生徒はたじたじだ。ラルフのヤツ、すぐ熱くなるのは相変わらずなんだな。
「オレに言えた義理じゃねーけど…落ち着け? ラルフ。そいつ、びびってる」
 ぽんぽんと肩を叩いてやると、ラルフは渋々黙り込んだ。と思いきや。

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契約後4。

 身体を流すと、ヴァンにまた抱えられて湯船に入れてもらった。…何だか抱えられる事に慣れてきたかもしれないオレが悲しい…。
 ヴァンは今度は自分の身体を洗い始めた。背中を見ると、確かに複雑な紋様が刻まれている。色は黒。これは得意な属性が闇か、または一般的でない何かである事を示す。基本になっている紋はどれだろう? それが分かったら、使い魔の…オレの種族が分かるんだが……。
 …吸血鬼…竜…妖精……。いや、妖精よりも、精霊…? とにかく、そこから絞り込む事ができない。でも、何故、竜や精霊? オレは竜にも精霊にも、一般人以上の縁はないぞ?
 食い入るように紋様を見ていたら、ヴァンがひょいと振り返った。
「……難しい顔してるな」
「色んな紋が混ざりすぎて、種族が読めないんだよ。種族すら分からない契約印なんて初めて見た」
 オレの返事に、ヴァンは驚いたような表情をした。
「あんた、契約印を見たら種族が分かるのか!?」
「大体は」
「へ~っ! 流石だな」
 何が流石なのか知らないが、感心したように言うと、ヴァンもザバザバと身体を流して湯船に入ってくる。
「でも、考えるのは後回しにしろよ。せっかくお風呂に浸かってるんだからさ」
 それもそうか。せっかく(どれだけぶりが分からないけど)お風呂に入ってるんだし、今は考えなくても…。
 オレは意識して深く息を吐いた。お湯の温かさとか、そういうのに意識を向けてみる。ぼーっとしてると、身体も何だかぽかぽかしてきた…よう、な……
「俺、先に出るから温もったらのぼせる前に呼べよ」
 ヴァンの声で、オレは我に返った。うわ…オレ、のぼせてた?
「!! …オレも出るっ!」
 慌てて湯船から上がり、ヴァンを追う。浴室から脱衣場に入った瞬間、目の前が急に暗くなった。…立ち眩みだ。
「ちょ…、アデル!」
 ……また、支えられた。こいつ…反射神経…凄いな。
「…ごめ……」
「っは~、心臓に悪いっての。まさか、もう歩けるようになるとか…」
 ああ、そういえば。お風呂の威力は絶大だな。
「立てそうなら、自力で服着れるな?」
 何とか体勢を立て直したオレに、ヴァンは布の塊を一つ渡す。
 オレは頷き、渡された服を広げた。

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契約後3。

「ほら、タオル」
 ショックのあまり茫然としてたみたいで、オレはヴァンがいつ来たのか気付かなかった。
「軽く洗ったら、湯船にゆっくり浸かろうぜ。あんた、身体冷え込んでるだろ?」
 何とか頷き、目で石鹸を探す。…あれ? 石鹸が無い?
「……石鹸は?」
「これ」
 ボトルを渡された。確かに「ボディソープ」と書かれてある。でも…ボトル?
「???」
「こう、タオルに取って…」
 見かねたのか、ヴァンはオレに渡したタオルを一旦回収し、トロリとした液体を垂らした。
「泡立てる」
 つまり…この液体が、石鹸だと?
 泡まみれになったタオルを渡し直され、オレはそれをマジマジと見てしまった。何だか凄い泡の量だ。石鹸って、こんなに泡立つものだったっけか?
 おっかなびっくりタオルで腕とかを擦るオレの背中を洗いながら、ヴァンが感心したように言った。
「俺達の契約印、本当に複雑なんだな」
「そうなのか?」
 見たくても、背中にあるものは見えない。
「洗い終わったら、俺のを見せてやるよ。先生がびっくりしたのも分かるくらい、綺麗だ」
「……へぇ…」
「そろそろ流すぞ」
 ヴァンは無造作にお湯のコックだけを捻り、シャワーを出した。
「お…温度調節は?」
「ここ」
「……へ?」
 てっきり水も出して調節するかと思ってたのに…何だ、この目盛り付つまみ?
 カルチャーショック、とはこういう事を指すのかもしれないな。

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契約後2。

 浴室の洗い場には、鏡が付いている。
 鏡の中から、オレを見返す魔物…オレ自身。長い白髪を床に流し、蒼褪めた顔の中、熟れた苺のように紅い瞳だけをギラギラと輝かせ。手足は痩せ細り、肌からは日焼けはともかく、黒子さえも消え失せていた。
「…嘘だ……」
 オレの目は、紅くなんかなかった。オレの肌は、こんな病的に白くなんかなかった。
 暗い地下牢での生活で奪われたのか、魔物になっても生き長らえた代償か。色素を失ったのは、オレの髪だけではなかったんだ。

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契約後1。

「ぅ…あっ!?」
 オレは、一瞬何が何だか全く分からなかった。
 すぅと、頭から血の気が引くような錯覚。次いで、思いっきり三半規管が揺さ振られるような…。
 吐くだけの体力と吐けるものがあったら、吐いていたかもしれない。目が回りに回っている。
「お疲れさん。よく頑張ったな」
 頭上から、ヴァンの上機嫌そうな声が聞こえた。
「な…にを……」
「転移魔法。あんたにやってもらった」
 ――何だ…って? オレが? 転移魔法?
「できない訳じゃないんだ。もう数回やれば、酔わずに自力でできるようになるんじゃないか?」
 ヴァンの言葉だけが、転移酔いの影響だけでなく麻痺して真っ白になった頭の中に響く。
 できない訳じゃない。
 やばい。泣けそうだ。単純に喜べたら良いのに、胸が詰まる。魔物化の影響を嘆きたいのに、それでも嬉しいと思ってしまう。
 頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたら良いのか分からなかった。
「その服、洗濯しても使えそうにないから処分するけど、良いか?」
 何も考える余裕がなく、オレは機械的に首を縦に振った。
「よし、じゃ、身体の表面の汚れも纏めて簡単に燃やすぞ」
「……燃やす?」
 鸚鵡返しに呟いて、オレはハッと我に返った。
「燃やすっ!?」
 じょ、冗談だろ!?
 だがヴァンはすっかり燃やす準備ができており、脱衣場を普通に通り抜けながら呪文を唱えた。
「俺が望む物を燃やせ。『炎よ』」
「っ!!」
 反射的に目を閉じ、息を詰めて身構える…が、思ったほど熱くはない。
「俺も服脱いでタオル取ってくるから、少し勘弁な」
 腰と背に固い感触。どうやら浴室に降ろされたらしい。
 オレは恐る恐る目を開け…息を呑んだ。

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間章・契約後3。

 転移してきたヴァンを見て、アデルは安堵の笑みを浮かべた。彼は相変わらず大量の魔力を垂れ流しているが、最初に感じたような拒絶的圧迫感は消えている。
(これだけ魔力垂れ流しておきながら、本人に自覚がないってのもな)
 思いながらも、ヴァンはアデルに声を掛ける。
「待たせたな」
 アデルは首を横に振った。立ち上がろうとしたのか、最後に見た時とは手足の位置がずれている…が、今立とうとしていない所を見ると、無駄な徒労に終わった事が窺えた。
 ヴァンはさっきと同じように、アデルを抱え上げる。食事もろくに与えられていなかったに違いないアデルの身体は華奢を通り越えて異様に細く、人間とは思えない程に軽い。服の下には骨と皮しかないのではないか、と危惧したくなるくらいだ。
 アデルは一瞬身体を強張らせたが、黙って大人しくしていた。
「ちょっとしんどいかもしれんが、我慢できるか?」
 ヴァンはふと思い付いて、腕の中のアデルに尋ねる。
 アデルは暫く考え、首を傾げた。
「しんど…い?」
 どうやら、ヴァンが何をしようとしているのか、分からなかったようだ。
「転移の感覚って、慣れない人は酔うらしいからな」
「……そうだったっけ…?」
 アデルの疑問は正しい。誰かに連れて行ってもらっての転移でなら、確かに酔う人は稀だ。
 ヴァンは悪戯っ子のように笑い、寮の大浴場に転移する。
 ――アデルの魔力を使って。

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間章・契約後2。

「うっわ、くっせー! アンタ、どんな試練受けたんだ? 何したらこんなに臭くなるのさ」
 開口一番に大袈裟な身振り付きでわめいた悪友を、ヴァンは取り敢えず殴った。
「煩い。あんたみたいなのがいると思ったから、あいつを連れて来れなかったんじゃねーか」
「えー、オレ見たかったのになー。アンタの使い魔。契約するつもりなんてないって豪語してたアンタが意見を変えるくらいの奴だったんだろ?」
「そいつが今、俺以上に臭くて惨めな状態で震えててもか?」
「うわ、試練ってまさか臭いに耐えるとか、そんな…」
「リック」
 ふざけた様子の少年は、名前を呼ばれ、黙った。友の口調が、あまりにも真剣だったから。
「あいつへの侮辱は、俺に喧嘩を売ってると見なすが良いか?」
「……悪かったよ。大方、何か訳ありっぽかったのを無理矢理口説き落としてきたんだろ?」
「分かったなら良い。で、頼みがあるんだが」
 たった今ヴァンの機嫌を損ねたばかりのリックが、断ろう筈がない。
「良いぜ。オレは何をすれば良い?」
「俺の部屋から、着替えを二人分持ってきてくれ。ついでに、ティアセル先生も。あいつを風呂に入れるから、大浴場にいる」
 リックは、頭は悪くなかった。
「ついでに余計な奴が来ないようにしとけば良いのか?」
「流石にこの時間帯から来る奴はいないと思うが…頼む」
「りょ~かいっ」
 おどけて敬礼までしてのけたリックに、ヴァンは自室の鍵を投げ渡す。彼が寮に向かうのを見送りながら、自身も学園の地下に転移すべく集中を始めた。

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