ええ、どうぞ?
構いませんよ、貴方の勝ちで。 その子供は、そう言って、微笑んだ。
何故、そんなに投げやりなのか?
悔しくはないのか? 気になって、ふと尋ねてみる。
いいえ、全然。
だって、勝とうと思えば、簡単に勝てるんですから。
だから、意味がないんです。 子供は相変わらずの笑顔である。
だって…ねぇ?
どんな相手だって、やがては年老いて死ぬんです。
それを、ただ待ちさえすればよい。
百年でも、千年でも、世界が滅びる、その瞬間まででも。
相手が死ぬその瞬間に、耳元で囁けば良い。
これで、こちらの勝ちですね、と。 背筋がうすら寒くなった。
この子供には、寿命という概念は存在しないのか。
いや、それよりも、世界が滅びる瞬間とはどういう事か。
どうなさいました? 相手の問いに、何でもないと首を振る。
子供が勝負の行方に興味なさそうなのが、救いだと思った。
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