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人間でいさせてくれよ。

 自称神様との疲れる会話を終え、じっと手を見下ろしていた顔を上げる。

 あーあ。
 まだ、注目されてましたよ。

 下を見れば、木の根元には、ユニコーンからペガサスから狼から虎から鹿から。
 草食獣から肉食獣まで、しかも生息区域関係なく、勢揃い。
 横を見れば、枝の上には様々な猿や栗鼠やカメレオンっぽいのや。
 上を見れば、これまた多種多様な鳥が。
 更に空まで葉の間を透かして見れば、ドラゴンまでいるときた。

 いやはや、流石はファンタジー世界。
 ……全く以て、意味不明だ。


 意味不明と言えば、俺の身体も意味不明な事になってるんだったか。
 取り敢えず、手はハムスターとか栗鼠とか、そんな感じのものだ。

 指は五本。
 面白い事に、グーチョキパーはできる。
 持とうと思えば、鉛筆や箸だって持てるんじゃないか……?
 要するに、普通の小動物でもなさそうな事は分かった。
 俺の世界でそんな小動物がいたら、ニュースになってる。

 とにかく、自分の姿が確認したい。
 どうなってるのか、見てみたい。
 どこかに水辺はないのか……?
 流石に鏡が欲しいとは、言わないから。

 ――あっちから水の匂いがしてる、気がする。

 そう考えて、俺は凹んだ。
 分かるだろ?
 人間に、水の匂いが分かる奴って、そんなにいないだろうがよ。
 つまりだ、この身体はニオイに敏感なんだ。
 それこそ、人間以外の動物みたいにな。

 凹みつつも、俺は匂いのする方へ駆けて行こうと……前足を着いた。
 そして余計凹んだ。

 どうやらこの身体、走る時は四足歩行……ならぬ、四足走行らしい。
 某、超有名な黄色い電気ネズミが如く。

 そして、俺。
 何故普通に四足で走れる……!

 普通に考えたら無理だろ!?
 こけるだろ!?

 頭の中でそんなバカみたいなノリ突込みを入れながら、木の枝から枝へと渡る。
 最後は、低い枝から地面に飛び降りて、俺は水辺に降り立った。

 ふわりと背後で尻尾が揺れる。

 ……尻尾まであるのかよ、この身体は。
 思いながら、水面を覗き込む。


 果たしてそこには、黒い栗鼠のような小動物が映っていた。

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